「さて、今年の紅白も終わったことだし、そろそろ除夜の鐘でもつきに行こうか」
新年を迎える瞬間の定番行事として、すっかりおなじみの除夜の鐘。
「除夜の鐘を108回つくことで煩悩を消す」とはよく言われていますが、さて、煩悩ってそもそも具体的に何?と思いますよね?そして、108という数の由来も気になるところ。
というわけで、仏教でいう「煩悩」の具体的な意味や、108の数の真相を3時間かけて調べまくってみました!
結論から言うとめちゃくちゃ難しかったのですが、なるべくわかりやすい表現でまとめていきます!
それでは、早速どうぞ。
※煩悩の考え方についてはいろんな説があります。今回はその中でも、108の由来として筆者が個人的に最もしっくりきたものをご紹介しますね。
Contents
まずは「煩悩」の全体像を理解しよう
煩悩・・・。
人間の心の中に潜むわずらわしい悩みのことです。
清らかな心から生まれるものではないということは確実にイメージできますが、それにしても108もあるの!?という感じですよね。
まずは、そんな煩悩の全体像をまとめます。
人が生きている限り悩まされ続ける煩悩は、大きく分けて2種類あります。
- 根本煩悩(こんぽんぼんのう)・・・心の中に根本的にある煩悩
- 枝末煩悩(しまつぼんのう)・・・根本煩悩によって引き起こされる二次的な煩悩
根本煩悩は、さらに10個の煩悩に分類されます。(←次の章で詳しく解説!)
それらは、心の中に根っこを張るように住み着いている煩悩なので、なかなか消滅させることはできません。
ではどうすればいいかというと、仏教でいう「修行」をして少しずつ根本煩悩を取り除いていきます。
その、10個の根本煩悩を取り除く過程が「98」あるそうです。
根本煩悩を取り除く過程「98」+根本煩悩によって引き起こされる枝末煩悩「10」=108
というワケです。
煩悩の種類が108個あるというイメージではなくて、心にねっとりとガムのように絡みついて取れない煩悩を、少しづつはがしていく過程が108あるとイメージしたほうが分かりやすいですね。
ではでは、ここまで分かったところで、人間が根本的に持っている根深い根本煩悩について、もう少し深く掘り下げてみましょう!
「10種類の根本煩悩」を分かりやすくまとめてみた!
10種類の根本煩悩。
全部知ってみると、「あぁ~わかるわ~」と妙に納得してしまいました。思い当たる節がありまくりです。
それぞれ次のような煩悩だそうですよ!
- 貪(とん)・・・心の底から湧き出る欲望。むさぼり。執着すること。
- 瞋(しん)・・・自分の思い通りにならないものに対して憎しみ怒ること。
- 癡(ち)・・・この世は常に変化しているということを理解せず、自分自身が絶対だと思い込むこと。
- 慢(まん)・・・他人と自分を比べて、自分の方が優れていると誇りたがること。
- 疑(ぎ)・・・苦しみを滅すると、悟りが開けるということを疑う。
- 有身見(うしんけん)・・・自分の身体や心の変化を認めないこと。
- 辺執見(へんしゅうけん)・・・何でも白黒つけたがり、極端な考えをすること。
- 邪見(じゃけん)・・・因果応報(善い行いをすれば善いことが返ってくる。悪い行いをすれば悪いことが返ってくる)を認めないこと。
- 見取見(けんしゅけん)・・・間違った見解を最も優れたものと信じ込み、他のものは劣っていると考えること。
- 戒禁取見(かいごんしゅけん)・・・間違った見解の中のルールに執着すること。
※6~10をまとめて「見(けん)」と言います。
あくまで仏教の教えなので、仏教の色が濃く出ているな~という煩悩も見受けられますが、それでも指摘されると「あいたたた・・・」と痛い部分はいくつかあるのでは??
仏教では、この根深い10個の根本煩悩を、
5つの修行で断ち切りながら、3つの修行ステージを上って「悟り」にたどり着く!!
という構図になっているそうです。
数字だらけでワケが分からなくなってきましたので、補足の図を↓
「欲界(よくかい)」っていうのが、欲望だらけの世界です。食べたい・寝たい・あれ欲しいこれ欲しい・素敵な異性と付き合いたい・・・みたいな、欲望だらけの世界。
その欲界を乗り越えた次のステージが、「色界(しきかい)」です。欲望から離れ、静かで清らかな心を持つ人がいる世界。
さらに色界(しきかい)を超えると、「無色界(むしきかい)」になります。肉体は存在せず、清らかな意識だけがある・・・という、今の筆者では理解不能な世界となります。
そして、無色界(むしきかい)の先に、「悟り」です。
このように、修行ステージを上って、悟りにたどり着くまでに、5つの修行で根本煩悩を取り除く98の過程がある・・・ということです。
5つの修行って?
5つの修業とは、仏教の教えにもとづいた考え方を学んだり、瞑想して精神統一したりすることです。具体的には・・・↓
- 世界は常に変化しているものだから、何でもかんでも自分の思い通りにならないよ!という考えを学ぶ(見苦所断 けんくしょだん)
- 苦しいのは煩悩があるからだよ!という考えを学ぶ(見集所断 けんじゅしょだん)
- 「苦」がなくなれば、理想の世界になるよ!という考えを学ぶ(見滅所断 けんめつしょだん)
- 欲望の苦しみも、禁欲の苦しみもない状態こそが、「苦」のない世界だよ!という考えを学ぶ(見道所断 けんどうしょだん)
- 瞑想
では、5つの修行で根本煩悩を引っぺがしていく98の過程、「欲界(よくかい)」「色界(しきかい)」「無色界(むしきかい)」修行ステージ別に詳しく書いていきますよ!!
「欲界(よくかい)」では全部で36!
欲望だらけ・煩悩だらけの欲界では、36の修行過程で根本煩悩を取り除いていきます。
もうこの時点で音を上げそう・・・とか言っている時点で筆者は欲界の人!笑
気を取り直して。
これまでお話してきた、10個の根本煩悩と5つの修行を組み合わせて、第1ステージである欲界では36の過程になります。
分かりやすいように表にしてみました↓
10個の根本煩悩 | 修行の種類 | ||||
見苦所断 | 見集所断 | 見滅所断 | 見道所断 | 瞑想 | |
心の底から湧き出る欲望 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
憎しみ・怒り | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
自分が絶対だ!の思い込み | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
誇りたがる | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
悟りを疑う | ○ | ○ | ○ | ○ | |
身体や心の変化を認めない | ○ | ||||
極端な考え | ○ | ||||
因果応報を認めない | ○ | ○ | ○ | ○ | |
間違った見解を優れたものと信じ込む | ○ | ○ | ○ | ○ | |
間違った見解の中のルールに執着する | ○ | ○ | |||
根本煩悩を引っぺがす経過の数(小計) | 10 | 7 | 7 | 8 | 4 |
合計 | 36 |
5つの修行(おさらい)
- 世界は常に変化しているものだから、何でもかんでも自分の思い通りにならないよ!という考えを学ぶ(見苦所断 けんくしょだん)
- 苦しいのは煩悩があるからだよ!という考えを学ぶ(見集所断 けんじゅしょだん)
- 「苦」がなくなれば、理想の世界になるよ!という考えを学ぶ(見滅所断 けんめつしょだん)
- 欲望の苦しみも、禁欲の苦しみもない状態こそが、「苦」のない世界だよ!という考えを学ぶ(見道所断 けんどうしょだん)
- 瞑想
根本煩悩の3割が欲界の修行で取り除かれたところで、次のステージ「色界(しきかい)」に参りましょう。
「色界(しきかい)」では全部で31!
一つ上の修行ステージ「色界」では、修行過程が少し減ります。
詳しくは下の表をどうぞ!↓
10個の根本煩悩 | 修行の種類 | ||||
見苦所断 | 見集所断 | 見滅所断 | 見道所断 | 瞑想 | |
心の底から湧き出る欲望 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
憎しみ・怒り | |||||
自分が絶対だ!の思い込み | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
誇りたがる | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
悟りを疑う | ○ | ○ | ○ | ○ | |
身体や心の変化を認めない | ○ | ||||
極端な考え | ○ | ||||
因果応報を認めない | ○ | ○ | ○ | ○ | |
間違った見解を優れたものと信じ込む | ○ | ○ | ○ | ○ | |
間違った見解の中のルールに執着する | ○ | ○ | |||
根本煩悩を引っぺがす経過の数(小計) | 9 | 6 | 6 | 7 | 3 |
合計 | 31 |
欲界を抜けたら、2番目の煩悩「憎しみ・怒り」はそぎ落とされているというワケですね!
それでは最後に、最終ステージの「無色界(むしきかい)」を見てみましょう。
「無色界(むしきかい)」では全部で31!
最終ステージの「無色界」でも、10大煩悩の力はすさまじいようです。ひとつ前の色界の修行をさらに反復していきます。
10個の根本煩悩 | 修行の種類 | ||||
見苦所断 | 見集所断 | 見滅所断 | 見道所断 | 瞑想 | |
心の底から湧き出る欲望 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
憎しみ・怒り | |||||
自分が絶対だ!の思い込み | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
誇りたがる | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
悟りを疑う | ○ | ○ | ○ | ○ | |
身体や心の変化を認めない | ○ | ||||
極端な考え | ○ | ||||
因果応報を認めない | ○ | ○ | ○ | ○ | |
間違った見解を優れたものと信じ込む | ○ | ○ | ○ | ○ | |
間違った見解の中のルールに執着する | ○ | ○ | |||
根本煩悩を引っぺがす経過の数(小計) | 9 | 6 | 6 | 7 | 3 |
合計 | 31 |
さぁ、ここまで来てようやく、人間が根本的に持っている煩悩を引っぺがす98の過程が終了しました!(欲界36+色界31+無色界31=98)
残りは、「10個の枝末煩悩(しまつぼんのう)」(根本煩悩から生まれる二次的な煩悩)を滅したら108!!
次の章では、枝末煩悩(しまつぼんのう)について分かりやすく説明していきます。
10個の枝末煩悩(しまつぼんのう)を分かりやすく解説!
除夜の鐘の回数の由来となっている108の煩悩の数。
そのうち98はここまでで分かりました。残りはあと10個の枝末煩悩です。
根本煩悩から生まれるのが枝末煩悩ということですが、それって具体的にいうと・・・?↓
- 無慚(むざん)・・・自分の罪を罪と思わず恥じないこと。
- 無愧(むき)・・・他人に対して恥じらいがないこと。
- 嫉(しつ)・・・他人に対する妬みやそねみ。
- 慳(けん)・・・人にものを与えたり、自分の持っているものが減るのを惜しむこと。
- 悔(け)・・・いちいち後悔すること。
- 眠(みん)・・・まるで眠った時のように、心の動きをなくすこと。
- 掉挙(じょうこ)・・・浮ついて騒がしいこと。
- 惘沈(こんじん)・・・心を閉ざし、ふさぎこむこと。
- 忿(ふん)・・・思い通りにならない人や物に対して、危害を加えようとすること。
- 覆(ふく)・・・自分の罪を隠そうとすること。
こんな感じになります。
たしかに、根本煩悩から枝のように生まれている煩悩たちですね。
落ち込んだり、浮ついて騒がしくしたり、ものに八つ当たりしたり・・・心当たりあるわぁ~。
これらも含めてエイッと滅したならば、見事ミッションコンプリート、108の煩悩を退治したことになります。
『除夜の鐘を108回つく』というのは、ここまでの修行の過程をあらわしたものなんですね。
まとめ
1年の終わりに、その年感じた煩悩を取り払おう!そして、煩悩を引きずらずに新たな年を迎えよう!
そんな意味で鳴らされる除夜の鐘。
「108つの煩悩を取り払う」の由来は、人の心にべったり張り付いたしつこい油汚れのような煩悩を、仏の道の修行で取り払う「過程の数」にありました。
今年の除夜の鐘は、あなたの心に張り付いた煩悩を、少~しずつはがしていく気持ちで聞いてみるといいかもしれません。
・・・ふぅ~、ここまでよく書いた!
あー疲れた、甘いもの食べたい!どこか遊びに行きたい!楽して痩せたい!
はっ!煩悩・・・。
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